小保方晴子のSTAP細胞に関する論文や、学位申請用論文に、多数の実験画像において類似性や不自然な画像加工の痕跡が認められることから、不適切なデータの使用や流用が疑われています。
疑惑論文1: Nature Letter
著者: Haruko Obokata (小保方晴子), Yoshiki Sasai (笹井芳樹), Hitoshi Niwa (丹羽仁史), Mitsutaka Kadota (門田満隆), Munazah Andrabi, Nozomu Takata (高田望), Mikiko Tokoro, Yukari Terashita (寺下愉加里), Shigenobu Yonemura (米村重信), Charles A Vacanti (チャールズ・バカンティ), Teruhiko Wakayama (若山照彦),
http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12969.html
Fig1b最右画像とFig2g下画像の胎盤部分だけが、なぜか互いに類似しています。しかも2つの画像の実験条件は互いに異なっています。前者はSTAP細胞のキメラマウス、後者はFI-SCのキメラマウスの写真です。両画像の解像度が異なるためもあり、完全には一致しませんが、二つの画像は異なる実験によって得られたものとされているため、極めて高い類似性を示すことは不自然です。これほどの高い類似性は、不注意ミスであるにせよ、意図的(故意)であるにせよ、同サンプルが複数回撮影されて別目的に使いまわされた可能性や、同一画像の胎盤部分を画像編集加工し流用した可能性などを示唆しています。いずれにしろ、生データ(実験ノート、写真のデジタルデータ、データの作成日や改変日)などを調査しないかぎり、真相は明らかにならないでしょう。小保方晴子氏の学位取得申請に重要であったTissue Eng Part A(疑惑論文3)の実験画像においても、多数の類似性が認められており、加工(上下反転など)を行ったうえでの流用の可能性があったことも考慮すると、このNature Letterの論文の疑惑データについても、詳細な調査が求めらます。
疑惑画像1: : ↓ Fig.1bと2gの胎盤画像を比較してください。高い類似性が確認できます。
朝日新聞の記事→ 共著者の山梨大学の若山照彦教授は、「同じマウスで角度が違う写真を2回使ってしまい、一方の削除を忘れた単純ミス」と説明した。若山教授はSTAP細胞を使いマウスを作製し撮影した。一つの胎児に対し向きを変えたりひっくり返したりして何枚も撮影。複数の胎児で計数百枚撮ったという。その結果、小保方さんが勘違いし同じ胎児の写真を使ってしまった。1人で追加実験をしながら図を作製するなど、忙しすぎたことも勘違いの要因の一つという。 加えて「論文を何度も書き直し、最終的に2枚目の写真は本文と関係がなくなっているが、削除を忘れた」と話している。(Nature誌記事における若山照彦教授のコメントも参考にしてください。)
小保方氏のNature Article論文の図3bのコントロール(未刺激)細胞のOct4-GFP(緑色)の蛍光顕微鏡写真(左下)の下部中央に、なぜか赤い細胞が存在し、ネガコン(陰性対照)画像として不適切という疑惑が浮上。
この論文については、下記アドレスのPubPeerサイトで議論してください。
https://pubpeer.com/publications/24476891
疑惑論文2: Nature Article
疑惑画像2: Figure1のi のレーン3と、レーン2,4の間に境界線が認められ、この電気泳動画像は複数のレーン画像を切り貼りして合成したものであることが示唆されます。
Natureの実験画像に関する規程(Image integrity)によると、「異なる時期、異なる場所で得られた画像は一つの画像として合成してはならない。もし、画像を対比させて並べる必要がある場合は、画像の間に明確に境界線を引き、図の説明文に記述しなければならない。」とあります。このImage integrityの規定に、小保方晴子氏のNature Article論文のFig.1iが違反している可能性があるわけですね。
以下、規定の一部を抜粋。
Images gathered at different times or from different locations should not be combined into a single image, unless it is stated that the resultant image is a product of time-averaged data or a time-lapse sequence. If juxtaposing images is essential, the borders should be clearly demarcated in the figure and described in the legend.
The use of touch-up tools, such as cloning and healing tools in Photoshop, or any feature that deliberately obscures manipulations, is to be avoided.
Processing (such as changing brightness and contrast) is appropriate only when it is applied equally across the entire image and is applied equally to controls.
Contrast should not be adjusted so that data disappear. Excessive manipulations, such as processing to emphasize one region in the image at the expense of others (for example, through the use of a biased choice of threshold settings), is inappropriate, as is emphasizing experimental data relative to the control.
疑惑画像3: 図3bのコントロール(未刺激)細胞のOct4-GFP(緑色)の蛍光顕微鏡写真(左下)の下部中央になぜか赤い細胞が存在し、さらには、バックグラウンドもControl画像とLow-pH-treated cellsの画像との間で異なるため、ネガコン(陰性対照)画像として不適切という疑惑が浮上しています。
疑惑論文3: Tissue Eng Part A
(小保方晴子氏の学位取得申請において重要であった論文)
論文タイトル: "The potential of stem cells in adult tissues representative of the three germ layers"
著者: Haruko Obokata (小保方晴子), Koji Kojima (小島宏司), Karen Westerman, Masayuki Yamato (大和雅之), Teruo Okano (岡野光夫), Satoshi Tsuneda (常田聡), Charles A Vacant (チャールズ・バカンティ), Tissue Eng Part A, 17 (2011)
Tissue Eng論文(学位業績)は、類似画像の多さからみて、うっかりミスによる貼り間違えなどという弁明は厳しいでしょう。これほどの多数の類似画像は、データ流用の故意性もしくは著者らのデータ管理の杜撰さ、研究内容の信頼性の低さを示唆しています。
東大医の小室氏(元千葉大医)らのように生データを紛失したとして真相をうやむやにし、プロトコルまで変えて再実験し、大量訂正するという逃れ方もできますが、いずにしろ、データ管理が不十分であると、誰も信用しなくなるでしょう。
なお、小保方晴子氏の学位取得に重要であった"Tissue Eng Part A"の論文のデータ流用疑惑については、この研究に科学研究費が使用されているようなので、文部科学省(日本学術振興会)や早稲田大学へ、制度に度づいて、調査を要求することができます。
→
(再生医療本格化の為の上皮細胞を中心とした新規組織工学技術の開発 Research Project Number:08J05089)
類似画像4: Fig.2のFgf5のバンド画像と、Fig.3のNat1のバンド画像が類似しており、データの流用が疑われます。
Fig.3のKlf4のバンド画像を上下反転させると、Fig.3のCriptoのバンドがに類似します。また、これらの画像の左から1列目と2列目のバンド画像は、Fig.4のNat1のバンドとも類似しています。上下反転という操作や、3つの実験画像にわたる類似性から、故意によるデータの流用が疑われています。
類似画像6: Fig.2のKlf4の左から1,2列目のバンド画像が、Fig.3のSox2の左から3,4列目のバンド画像と類似しており、データの流用が疑われています。
追記(2014年02月18日):2014年02月18日の朝日新聞報道によると、早大広報室は「仮に問題の画像が取り消されたとしても、博士論文の趣旨に影響しないと考えている」と発表したとあります。このような「データ流用はあったが論文の結論には影響しない」という趣旨のコメントを、研究不正を調査する立場にある研究機関(早稲田大学)が、調査着手前から、発表したのは異常です。これは調査機関自体が問題や不正を隠蔽する方向に動いていることを示唆しています。早稲田大は、生データを検証したり本人への聞取り調査もせずに、なぜ論文の趣旨に影響しないといえるのでしょうか?少なくとも4つの実験画像に亘ってデータ流用が認められる以上、意図的に行われた可能性や杜撰なデータ管理が推測され、論文の結論やその他データの信頼性も低いのです。
問題1:
小保方晴子氏の博士論文の研究業績に、実際には存在しない国際特許が記載されていた疑惑(虚偽記載、業績捏造疑惑)が、上がっています(下記参照)。
小保方晴子氏の博士論文概要の学位申請研究業績書の欄に、”国際特許 Haruko Obokata, Charles A. Vacanti. Sub Population of Retained Embryonic Like Cells”の記載があるが、HARUKO OBOKATAで特許を検索しても、2013年公開のSTAP特許の1件だけ。
特許は出願して1年半で公開されるので、特許出願がなされていないか、 出願したが、公開される前に取り下げたかのどちらかだが、 同じ技術内容が、論文として公開されているので、取り下げる意味はない。詐欺商品の「特許出願中」のようなものかもしれない。通常、国際特許(PCT)は費用がかかるので、 まずは、アメリカに国内出願をして、それから大事だと思ったら、 追加修正を確認した上で、本命のPCTを出願する。 STAPの特許出願はその手順に従っている。 博士論文においては、最初から国際特許と書いているのと、出願番号も書いていない時点で十分怪しい。
国際特許の検索
英語
http://patentscope.wipo.int/search/en/search.jsf
日本語
http://patentscope.wipo.int/search/ja/search.jsf
問題2:
小保方晴子氏の博士論文審査報告書に、審査員として記載されていたPhDを持っていないVacanti教授の肩書きが誤ってMD, PhDとなっていたことが問題となっていましたが、2014年2月19日に密かに訂正されたようです。しかしながら、訂正に関する告知がないことが、さらに批判を招いています。 旧 博士論文審査報告書→
新(訂正後) 博士論文審査報告書→ (写し)
問題3:
小保方晴子氏の博士論文概要の学位申請研究業績書に、Tissue Eng Part Aの論文が、業績として記載されていますが、その論文は疑惑論文3のことであり、多数の流用画像が認められうことから、不注意ミスではなく、故意による捏造が疑われています。
利益相反事項の未記載問題
利益相反問題1
小保方晴子氏の2011年のNature Protocol誌の論文は、(株)セルシード社の製品の細胞シートの性能に関するものでした。そして、論文の共著者である東京女子医大の岡野光夫教授や大和雅之教授は(株)セルシードの関係者であり、特に、岡野光夫教授は、有価証券報告書ではこの時点で同社株の大量保有者かつ役員でした。このように、金銭的利益相反問題が存在するにも関わらず、このNature Protocol誌の論文には、”金銭的利益相反は無い(The authors declare no competing financial interests.)”と宣言していました。これらの虚偽記載もまた、彼女らの信用を大きく損なう結果となりました。
ノバルティスのディオバン臨床研究不正事件でも問題になりましたが、このような利益相反事項(論文出版により金銭的利益を得たり失ったりする可能性のある企業の社債や株の保有など)は、論文投稿の際に開示するべきとされています。特にNature Publishing はこの点に厳しく、その規定(Nature journals' competing financial interests policy)で、投稿する際には、投稿論文に利益相反があるのか無いのか、明記することを義務付けています。
↓ Nature Protocolの論文より引用
Competing financial interests The authors declare no competing financial interests.
以下の3項目は、Natureの規定で、"金銭的利益相反(Competing financial interests)"として定義された具体的項目です。
1) Funding: Research support (including salaries, equipment, supplies, reimbursement for attending symposia, and other expenses) by organizations that may gain or lose financially through this publication.
2) Employment: Recent (while engaged in the research project), present or anticipated employment by any organization that may gain or lose financially through this publication.
3) Personal financial interests: Stocks or shares in companies that may gain or lose financially through publication; consultation fees or other forms of remuneration from organizations that may gain or lose financially; patents or patent applications whose value may be affected by publication.
(日本語訳)
1) 研究資金: 論文出版により利益を得たり失ったりする可能性のある組織(団体)からの研究補助(給与、装置、備品、シンポジウム出席のための支援、その他の経費)
2) 雇用: 論文出版により利益を得たり失ったりする可能性のある企業によって、最近(研究プロジェクトに従事している間)、現在、あるいは将来的に雇用されること
3) 個人的な金銭的利益: 論文出版により金銭的利益を得たり失ったりする可能性のある企業の社債や株、金銭的利益を得たり失ったりする可能性のあるコンサルタント費やその他の報酬、論文出版によってその価値が影響を受ける可能性のある特許、または特許申請。
利益相反問題2
小保方晴子氏ら理研、チャールズ・バカンティ教授らのハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院、大和雅之氏の東京女子医科大学は、共同で、STAP細胞に関わる国際特許(WIPO Pub. No.: WO/2013/163296:HTML、PDF)を出願しています。
問題1で述べたように、特に、Natureグループの雑誌では、このような利益相反事項(論文掲載の可否によって価値が変わるような特許を出願している場合など)は、論文投稿の際に開示する義務があります。
しかしながら、小保方晴子氏らは、下記のように、Nature Articleの論文 (疑惑論文2)において、"金銭的利益相反(Competing financial interests)は無し"と明記しているのです。小保方氏らは、Natureが定義している”Personal financial interests(個人的な金銭的利益)”の項目に違反しています。一方、「職務発明の対価は法人が決めるので、本件は、Natureの規約の"個人の金銭的利益(Personal financial interests)"には該当しない」と擁護する意見もあります。しかしながら、東大理学部教授のRobert Geller氏は、「例えば投稿時に編者にそう説明したて編者がそれを認めたら問題ないですが、いまそれを言うなら詭弁でしょうね。」と述べています。
↓ Nature Articleの論文より引用
Competing financial interests
The authors declare no competing financial interests.
STAP細胞作製の再現性について
小保方氏が発表したSTAP細胞の作製には、Nature論文の共著者で共同研究者の若山照彦教授とその弟子(student)が、小保方氏指導のもとでの理研の実験では再現に成功していますが、若山教授が山梨大学のラボに移った後では未だ再現に成功していないことが判明しています(Nature誌記事より)
カリフォルニア大学の幹細胞研究者ポール・クレプラー博士が運営しているSTAP細胞作製の再現性確認実験の結果を報告しあうためのブログ記事(Knoepfler Lab Stem Cell Blog) では、まだ再現に成功したという報告はありません。
小保方晴子の論文では「生後7日新生児マウス」由来の細胞によってSTAP細胞を確立されていますが、現時点で上記サイトに報告されている追試では新生児マウスの細胞を用いているのはありません(生物種未記載にはある) 。よって、現時点で再現性がないと断定することはできません。
現在の追試報告例(10例):未だ、再現成功例無し。
Ethan: 失敗、細胞腫への言及なし
Ruben Rodriguez: 失敗、「ヒト」新生児繊維芽細胞使用
Elliott Schwartz: 失敗、「ヒト」繊維芽細胞
Subhash Kulkarni: 失敗、新生児全血、成体全血
Sasha: 失敗、マウス胎仔繊維芽細胞、マウス成体神経幹細胞、マウス胎児神経幹細胞
Hong: 失敗、マウスES細胞
Yoshiyuki Seki: 失敗、マウス胎仔繊維芽細胞
Andres: 失敗、「ヒト」胎仔繊維芽細胞
Dr. Pierre Debs: 微妙、成体ラット・マウス脾臓細胞
Ray and Sandy: 失敗、MEF(マウス胎児芽繊維細胞)
小保方さんの“新”発見は、特殊な細胞ではなく、ごく普通の「リンパ球」でこうした働きを見つけたことだ。だが、「論文からはその根拠がハッキリしない」と言うのは、理化学研究所やワシントン大で免疫学を研究したことのある明石市立市民病院研修担当部長の金川修身氏である。「細胞がリンパ球に分化すると『遺伝子再構成』という現象が起きる。ということは初期化(別の細胞に変化)した『STAP細胞』でできたマウスのリンパ球にも『遺伝子再構成』が必ず見られるはずです。しかし、論文ではそこが分かりません。さらに(第三者も同様の研究結果を得る)『再現性』の報告も今のところ見当たらず、失敗報告ばかりです。断定的なことは言えませんが、もう一度(実証実験の)やり直しという可能性もあるでしょう」 (日刊ゲンダイの記事より)
慶應大学の吉村昭彦教授も、研究室ホームページ上の記事(TCR組み換えデータの重要性)にて、「私の関心はSTAP細胞が論文に書いてあるように『未分化細胞からのinductionであってもとからある幹細胞のselectionではない』という結論が妥当かどうかという点。繰り返しになるが、それをTCR-rearrangementで決着つけようとするならば、T細胞からできたSTAP細胞、STAP幹細胞、それにキメラマウス(4Nから作ったものが望ましい)のgenomic DNAのTCR rearrangementを調べる必要がある。」と指摘している。
小保方晴子氏のSTAP細胞に関するNature Letter論文(疑惑論文1)には、RNAseqとChiPseqの実験データに関してNCBI BioSample databases用のアクセスIDを下記のように記載していたが、実際は、SRAやGEOなどのデータベースには登録されていなかったことが判明し、問題となっている(2014年2月12日)。
"RNA-seq and ChIP-seq files have been submitted to the NCBI BioSample databases under accessions SAMN02393426, SAMN02393427, SAMN02393428, SAMN02393429, SAMN02393430, SAMN02393431, SAMN02393432, SAMN02393433, SAMN02393434 and SAMN02393435."
ネイチャーの規定では、論文を出版する際には、このような関連データを適切なデータベースに載せておかなければならないという義務がある。
ネイチャーに問い合わせをした人物によると、ネイチャーは既にこの問題に気づいており、著者(小保方ら)に連絡を入れたらしいが、著者から返答があったかどうかについてはわかっていない。
追記(2014年2月21日):米国時間で2014年2月19-20日頃にデータがようやく追加されたようです。
このように、当雑誌が彼の影響下にあるゆえ、チャールズ・バカンティ教授は、この問題のある小保方晴子の論文を撤回せず、データ流用が疑われている実験画像をミスによるものとし、強引に問題画像の削除だけで済まそうしているのかもしれない。
● 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ:STAP細胞の顛末のこれから(柳田氏は、当該研究者よりも当該研究機関が問題に対応する傾向になってきたことが芳しくない効果を生みだしている、と指摘しています。)
● 一人抄読会 by md345797: (日本語による分かり易いりSTAP細胞論文解説です。)
小保方晴子の論文の疑惑に関するニュース報道
2014年2月15日 MAINICHI: Research institute probes 'irregularities' in images associated with STAP cell discovery
2014年2月15日 毎日新聞:STAP細胞:「不自然な画像」指摘受け理研が論文を調査